2010.06.30 Wednesday
「力士その後」を考えさせられたと思ったら、「JALその後」の悲劇を知らされた。
なんぼリストラだからといっても、自家養成のパイロットの卵を、訓練中も含めて放り捨てるんですと。
酷!を通り越して、これはあんまりではないかい?
「地上職になら雇ってあげるけど、君たちに操縦席は用意してあげられない」
という会社の説明に、涙ぐむ卵くんもいたらしい。ごもっともだろう。同情しますよホント。
航空自衛隊に入ったら、「戦闘機が予算カットされてしまったから、すまんが海自の潜水艦なら空きポストがある」と言われた気分ではないか!(ちがうか?)
あこがれの県警音楽隊に入ったら、捜査4課の暴対の刑事をさせられ、抗争の矢面に立たされることになった元ブラスバンド部員みたいな気分ではないか!(ちがうか?)
採用したからには、せめて訓練(これに一人何億と費用がかかるらしい)は安くつく国に外注して国際免許を取らせてから雇用は約束するとか、工夫の余地はあるのではないか?
「訓練地は平壌とバグダッドとテヘランと、どこがいい?」と聞かれても困るだろうが。
パイロットとして応募して競争を勝ち抜いて、道半ばで出鼻をくじかれた卵くん(乙女もいたかもしれない)たちには同情を禁じえないが、「そんなものだ」ともいえるのが現実社会だ。法学部を出て法曹に就職できる法学士はごく一握りだし、ANAに就職してホテルマンに配属される社員だって、当然いるわけで…。
営業マンとして入社して設計をやらされるようなことはあまりないと思うが、設計開発職として採用されて営業をさせられ苦労していたエンジニアさんは知っている。
こんなケースも、ひとつのチャンスなのだと前向きに考えると本職の肥やしになると思うのだが、融通のきかない専門家は悩むこともあるようだ。真面目な人ほど。
自分であげた看板と組織のポストが合わない悲喜劇は、幸か不幸か僕にはない。
ハラスメントで、まったく畑違いの不動産の税法など教えさせられたこともあったが、今は専門分野に専念できる。地位も名誉も部下も出世の見込みもない(笑)が、大学教授になって、経営会議だの生徒集めの営業だのと駆り出されている先輩の苦労話を聞くと、地位と名誉と部下と出世の見込みを捨てれば自分のやりたいことに専念できるのだ。
これも考えかた次第だから、マイホーム・マイカー・マイワイフを手に入れるために職場の人事にゲタをあずけるのも人生、マイライフを優先して組織に片足の指先しかあずけないのも人生。「地位が人をつくる」のと「地位が人を殺す」のは表裏一体なのだ。
とはいえ、「パイロット未満」君たちの今後は少し心配になるね。
ANAで引き継いでもらえると一番すっきりすると思うが、「操縦」にこだわりがある卵くんたちのために、自衛隊、海保も受け皿になってあげられないもんですかね?
たぶん、女子パイロットの割合なんかは自衛隊の方が高いと思うし(うろ覚えの記憶でしかない)。
JAL出身F15パイロットなんか登場すると、スクランブル発進しなくてはいけない場面でも、天気を調べたり搭乗前ミーティングをやろうとしたり、ちょっとしたペースのちがいは出てくるかもしれんが(笑)、ミサイルをお客様だと思って丁寧に操縦する腕前は高いと思いますぞ。
航空ショーで接客する業務など、得意中の得意だろう。自衛隊のPRにもなる。
ただ、ついクセか未練かで小牧に着陸しなくてはいけないのにセントレアに降りてしまったり、合コン相手は婦人自衛官だけと内規があるのに(ウソ)、デルタだのアシアナだののCAを専門にしたり、民間機感覚は抜けないかもしれない。
知覧で訓練しなおしますか?