物欲大王に負けちまった。
1ヶ月ほど闘ったつもりが、あちこち調べているうちに、「これ、悪くないかも」と好印象がスカイツリー化してきたのが、
ファインピックスHS10。
ダメ出し判決王Dんきがま判事への目くらましに、どーんとD70を買ってしまう作戦も、ちょこっと考えた。
ニコンのフルサイズ一眼だと、手持ちのレンズ資産も活かせる。その中に、
24mmF2.8〜85mmF4のズームニッコールというのがある。数年前に買って、24mmという僕にとっては前人未到の広角は、とてもおもしろいのに自然な感覚で、違和感がない。超広角をあやつる上北沢暗室職人氏にいわせると、これぐらいの広角は準標準のようなものだろうし、僕の標準は40mmなので、「まず広角」なら24mmが妥当なところだろう。
が、そのズームニッコールにふさわしい軽快なフルサイズ一眼が10万円で出回るのは、まだまだ先の話。
デジイチの売り上げも落ちているらしい。
代わりにネオ一眼とかいうウソくさいジャンルが伸びていて、「それを一眼というなら、カシオのQV10だってケータイカメラだって一眼やがな」と突っ込むヤボな声は商業メディアに封殺され、コンパクトカメラをレンズ交換にして1粒で二度おいしい利ざやを稼ごうとする苦肉の策が、にわか人気を集めているにすぎない。
「レフレックス」するから一眼レフなのである!
受光素子(またはフィルム)に届く光軸を鏡でファインダーに誘導してライブビューできるのが一眼レフの魅力でもあり、それと引き換えにミラーの衝撃、音、埃がついてまわる。
一眼レフ使いの埃いや誇りでもあり撮影のリズムにもなっているミラー音は、僕もF3にMD4をつけてギュンギュンやっていたクチだからわかることはわかるのだが、場所によっては耳障りでしかたない。コンサートの客席でバチバチやっていたら暗殺されかねないだろうに、講演会ぐらいになると取材陣は大手を振って騒音を撒き散らす。気が散るんですけど!
無音ステルスカメラには、いかがわしい印象がつきまとうものの、隠密行動こそ写真の極意でありましょう。
それを可能にしたのがデジカメだった。
限りなく無音に近く、クラシック・コンサートであろうと教会の礼拝であろうと、かき乱すような音は出さずに撮影できる(はずなのである、メカニズム上は)。
静かに画像確認できるために液晶モニターがあるわけで、その副産物としてカメラから顔を離して撮る撮影スタイルが定着してしまった。
それを「身体性の喪失」とか「確認強迫神経症カメラ」と呼ぶ議論は横に置くとして、それならモニターをファインダーに閉じ込めちゃえ、としたのがEVF。
これが、ステルス一眼レフのとりあえずの帰結ではないかと僕は思う。
ひと昔前のビデオカメラのような雑なEVFも多かったので、のぞいていると疲れてきて、背面モニターばかり見るようになってしまうのがEVFの「黎明機」だった。このころから、フジやソニーは、こつこつとEVFのレベルアップを積み重ねてきた。
リコーGX100、
GX200の外付けEVFの美しさには驚き、パナGHシリーズのライブビューと見違えそうなEVFは涙でかすむ(笑)ほどウットリしたものだが、そこまで到達はしていなくても、レンズで勝負したのが、さすがフジノンレンズの富士。
Finepixのブランドをもっと全面に押し出して定着させればいいだろうにとも思いつつ、ペンタ部分にFUJI「FILM」と掲げている心意気は立派でありますな。
たしか、フジのこのシリーズは阪急おマニヤ君が、電車と子宝撮影の武器として愛用されていたような記憶もあるのだが、あの直線的なデザインはクールだった。
その進化形は、24〜720mmの30倍ズームとフルハイビジョン動画をつけ、バリアングル液晶モニター、単三電池駆動、手動ズームリングはそのままで、丸っこいデザインになって登場した。
ところがけっこう賛否両論が激しくて、ファームウェアの更新もあったりして、値崩れも早かった。カカクコムの最安値をにらんでか、ヨドバシでポイントをつけると実質3万円を切っていた。もう、「ニイタカヤマノボレ」である(苦笑)。
会議に続く昨夜の打ち上げの後ヨドバシに突入し、酔っ払った勢いで買ってしまった。その1時間後には戦艦大和君を呼び出して、
パワーショットを1万円天で売りつけ、めでたしめでたしの下取り買い替えが完了。
いや、パワショも致命的な欠陥はなかったんですがね…。
自分撮りもできるバリアングルモニターはパワショの方が高機能だし、安心の単三電池だし、ネオ一眼としては最小サイズに近い。このサイズで、よく光学20倍ズームまで乗っけているものだと思う。
ただ、花火日記で書いたように、バルブ撮影だけは明らかに
先代パワショ(杉本彩に婿入りした)より退化していた。不満といえば、それだけ。
HS10は、モニターの可動域は上下方向だけだが、バルブで30秒まで開ける。30倍ズームは怒涛の迫力だ。広角側24mmも、のぞいていると自然に見える。
ゴムを貼ったリングを手で回して、なんと720mmまで好きなペースでズームアップできるのは、昔からなじんだ当たり前の感覚だが、心地よいマニュアル感がある。
パワショとちがって58mm径のネジ山が切ってあるので、フィルターもフードも汎用品が自由に装着できる。
手動フォーカスも鏡銅にリングがあるし、マニュアル露出で絞りやシャッターを選ぶのも、モード切り替えとは独立したダイヤルでできる。
ダイヤルくるくる大好き族のハートをつかんだ、ナイスなヒューマン・インターフェイスなのだ。
絞りとシャッタースピードの切り替えがちょっとわずらわしいところだが(フィルム一眼は左手と右手で同時操作できるから早い)、露出計はというと、針式のニコンF2フォトミックのような、いい意味で曖昧な針が液晶表示で出るから、「すこしアンダー、微妙にオーバー」もダイヤルで追い込んで行ける(デジタル写真で、そこまで露出を微調整するのも酔狂なこだわりですがね)。
なにぶん、昨夜はベロッベロで満を持した衝動買い、そのあと戦艦大和君とパブでウィスキー三昧、ヨレヨレで帰宅して(そのわりにエネループは充電しておいた)昼に起きてからセットアップしたので、試し撮りはこれからである。
このジャンルのカメラにはつきものの不親切で、簡易ケースさえついてないので、別に調達しなくてはいけない。
微妙にでかいから、百均のポーチで何とかなるかどうか・・・?液晶保護フィルムは「蚊さんの百均」で帰り道に調達してきたけど。
ペンタプリズムもないくせに、前に大きく貼り出したペンタ部分って、どうよ!?と写真で違和感を持ち、現物でいっそう感じたのも確かではある。
が、この奥行きは、ポップアップ式のストロボをできるだけ上にはねあげて、太くてでかいレンズ部分がストロボ光の影を近くの被写界につけてしまうのを防ぐ意味があることに気づいた。なるほどね。
ネオ一眼の工業デザインは、EVFのおかげで光軸を自由に想定できるから、フジもソニーもパナも、あっと驚く新製品を開発してくるかもしれない。
ただ、ダイヤルくるくるインターフェイスと単三電池は、風前の灯といえそうなのが寂しいところだ。
フジ「フィルム」センスのデジタル一眼の今後に、かすかに熱く期待してますから。