社長が誇らしげに「ピーチです!」と宣言していた
全日空系のLCCは、ちょいと船出が遅すぎた感もあるにはあるが、和製LCCがどんな持ち味を出せるか、楽しみだ。
「桃」に萌える客もいるのではないかね?
運よく黒字が出てしまうと、今までの高コスト経営は何だったのか?という疑問がプレッシャーになって、客から乗務員への視線も厳しくなる。ベテランCAには、「あなたは若手の何倍の労働価値を生んでいるのか?」と。
単に人件費を比較して、センセーショナルに「空飛ぶ高給取り」を撃ち落とすような遊戯に転化するのもどうかと思いつつも、まだまだコスト・ダウンの余地はあると思う。
テレ東WBSの取材に対して、ピーチ幹部は「乗務員のマルチタスク化」なんてことを宣言していた。いよいよ、空飛ぶ人材は「高性能な道具」として酷使されるわけか…。
CAに機内清掃や販売も(今まで以上に)やってもらうよ、という号令が届いた桃娘たちの心境や、いかに?
それなら操縦もやらしてみんかい、エア・パニックもの映画のように・・・という突っ込みは冗談としても(天海祐希のようなベテランCAなら、やったろかい!と腕まくりしそうだから、お手並み拝見してみたい)、もうウェイトレスのような仕事はやらなくてもいい時代だ。
客には空弁を買って持ち込んでもらえばいいのだ。
なれ寿司やシューマイ弁当を何百人もの客が密室に持ち込むと壮絶なことになるから、要はギャレーを外に出したような売店をおいて、機内食と同じものを買ってもらえばいい。買いたくない客は買わなくてもいい。
客室の清掃や保守点検は、CAにとっては勝手知った職場だから効率的にできるはずだし、なんなら客も動員すればよろしい。手伝ってくれれば、お駄賃がてらポイントカードでも発行して、100ポイントでツーショット写真、500ポイントで握手券、1000ポイントで合コン券とか(笑)。
JRにはなかなか真似ができないCAの「マルチタスク」である。
もう、僕はテツをやめて飛行中年に変身するぞ。
マルチタスク化は、人間にあてはめると寒々しい響きもあるが、当たり前っちゃー当たり前の労務方針ではある。二人分、三人分の労働価値を生産できる人的資本を経営者が求めるのは当然だ。
非正規雇用と正規雇用が顧客の前で同列に仕事をしている点で、CAと似た事情を自分の職場と重ね合わせる労働者は多いだろう。
従業員が何でもできるマルチ人間になるだけでなく、客が従業員と入れ替わることもある。金を払って研修担当をするのもどうかと思いながらも、謙虚に客から学ぶことは実際ある。
サービス業は特にそうだ。
学生が教育の消費者でいるばかりでなく、ひょっとして「生産を補助する人材」がいるかもしれない。必ずいると断言してもいい。なのに、「無知なお子様に教えてやる」構造を、日本の学校は守ってきた。
学生が先生を務める機会は、もっとあってもいい。
僕が教会の日曜学校で先生と呼んでいたのは神学生だったし、YMCAのリーダーは職員もいれば大学生のおにーちゃん、おねーちゃんもいた。学びながら教えるマルチタスク人間だったわけだ。
家庭教師や塾講師は僕もずいぶんやらせてもらったが、この伝統的な学生アルバイトは、勉強してきたことが収益に直結する。ボランティアも悪くないが、ちゃんと報酬に伴う責任の生じる仕事をするのは、貴重な経験になると思う。
学生でなくてもできるアルバイトより、学生だからこそできるアルバイトをする方が確実だ。
すでに大学生の学力低下は言い古された感もあるほどで、数学のできない経済学生や、英語の読めない商学生(小学生か!?笑)も当たり前の顔をして増殖している。4年間のうちに修正しておかないと、シューカツで馬脚を出してあわてても遅い。
そこで、教養課程の無知無教養無恥無修正な少年少女に、数学、外国語、理科(科学)、国語を教えるチューターを上級生がやればいい。仕事に応じて学費を割り引くと、けっこうなインセンティブになるはずだ。
TA、RAの制度は形としてはあっても(僕も2年やって学費はチャラになった)、ほかにも仕事はある。
京大カンニング事件のicezuki君は、晴れて大学生になれたら、きっと有能な試験監督業務ができるだろう。
ミスコンは女性差別だと逆風を浴びて久しいが、ミスコン、ミスターコンを盛大にやって、ただし高校回りの営業をやってもらうのを条件にする。進路指導教諭をくすぐって新入生を集めることができれば、歩合で報酬を出せばいい。
学生を母校の経営に活用すること自体は、決して責められるべきことではない。
勉強してきたことを後輩の勉強に役立てて収益にもつながれば、勉強のインセンティブにもなる。
教わった側が教える側に回る連鎖が、頭脳集団をつくる・・・のに、企業では当たり前の「知の移転」が、学校にはきちんと制度化されていないのは寂しい。せいぜい、サークルで先輩から「楽勝法」を教わるぐらいで。
個人的には、教室でミスター・シャガク(立派な大学を出た社会学士)を指名して、「初歩的な疑問は彼に教わるように」とPRしているのだが、彼が「カテキョー」で報酬を得ているかどうかはわからない。ボランティアでもいいだろうし、ビール一杯ごちそうになるぐらいでもいいだろう。
教えることで自分も理解が深まるから、決して損はしない。知の移転ではなく知の「相乗効果」になるにちがいない。
LCCの経営から脱線してしまったが・・・
「消費者が生産者に回ること」は、保安上の理由もあって航空業界では難しいだろうが、福祉受給者の福祉参加という形はおおいに可能だ。患者会や家族会、被害者会のような集団だと、ピア・ヘルプ、ピア・サポートも普通に機能している。
東北の避難所住民も、避難所の運営に主体的にかかわってもらうと復興に弾みがつくはずだし、官民の上下関係が揺らぐいいチャンスになるかもしれない。
国に何をしてもらえるかと受け身でいるな、何ができるかを考えようとケネディは呼びかけたらしいが、「できる国民」が増えて公的なサービスのコストカットができれば、それに比例して公務員の人件費もカットできるだろうか。
行政コストをカットするとサービスは低下しますよ!と脅迫する種族もいるが、ニーズとサービス、官と民、鶏と卵・・・どっちが先かは、永遠の難問である。