2011.07.31 Sunday
小学校の同窓会は初めてだった。
僕は寸前に「中退」してしまったが、我々の学年がちょうど創立100周年生だったのと、人生ジャスト半世紀というキリのいい年なので、話が持ち上がったようだ。
37年もたつと、正真正銘のオッサンとおばさん。祖父母になっている達人もいた。でも自然と童心に返るもので、速攻ワープする。
僕は後ろ髪を引かれつつ転出した部類なので、よけいに懐かしい。農家の子にいじめられ、ホームシックならぬスクールシックにさいなまれていたから、よけいに。
都心の小学校なので、地元に残っている卒業生も多い。商店主のご子息は、ローカル情報もちゃんとおさえていて、記憶の糸をつないでくれる。
面と向かったとたん、「おぉ、ちびくろサンボ!」と思い出してくれるやつもいた。
「おまえ、よういたずらして怒られてたな。山陽新幹線の開通の日に、タダ乗りして新聞沙汰になってたやろ」
「ちゃうちゃう、あれ弟やって」
「もうスカートめくってないやろな」
「去年きっぱりやめました!」
とまぁ、「悪ガキ」タグで思い出してもらえるのはありがたいことである。
いつもニコニコして路傍のひな菊のようにたたずんでいた女子は、幸いほとんど変わらずに列席なすっていた。
「**さんって、癒しキャラやったよな」と、ご本人を前に他愛もなく花を持たせると、
「そうかー、おまえも好きやったんか」と横槍が入る。
「好きとか、そんな邪悪な気持ちちゃいま!」
「俺も好きやった」
「だから、好きとか初鯉とか、ちがうって!!」
けっこう迫力のある熟女に皆さん成長なさっていたので、ラブアゲイン・シンドローム云々には結びつかない、タイムマシン同乗者たちである。大学生の母になっている令嬢、出戻った娘と同居している御陽気なおばーちゃんもいる。屈託なく酒を酌み交わして、「その後の人生」を紹介しあうが、とても語り尽せない。
男どもは、ガキ大将はガキ大将のまま、秀才は秀才一直線だった。わかりやすい。
「俺も、僕も、お前の腰巾着やったぞ」と指摘されて、ごめんなさーい!!と謝るガラス屋の息子は、いまや立派なパパである。
灘・六甲進学組は、全国か世界の第一線で忙しく活躍されているのか顔を出してなかったが、目の前にも博士、社長、教授がズラリ。
通っていた塾の息子がいたので、
「もうちょっと塾で真面目にやってたら、出世できたかもしれんなぁ」
とグチっておいた。責任転嫁である。
光化学スモッグ注意報が続出する当事の環境で、小児喘息に苦しみながらガリ勉をしているのがよかったのかどうかは、なんともいえない。
塩屋か三木か、いくつか選択肢があった転居先の中から落ち着いた新天地でそれなりに楽しい友人もでき、健康体になって野山で遊び、平凡な進学をする。
それが、おぉ、ここですれ違ってたか!?という交点をさぐり当てた同級生に、二次会の後お茶に誘われて語り明かした。
やはり秀才クンは秀才一直線だったが、イヤミのない穏やかな紳士ぶりも変わらない。80年代ニューアカ時代にはやっていたトーマス・クーンが来日講演にくるというので聴講に行った京大で、そのとき彼は経済の博士課程に学んでいたのであった。奇遇やねぇ…
国際金融の最前線でキャリアを積んでから最近になって大学に転職した彼とは、専門は違っても、往年の大学、いまどきの大学、未来の大学について丁々発止。僕などは単発でマイナーな大学に出講する程度でしかないが、今の日本の大学のありかたについて、アウトサイダーの目線はいくつか共有できた気がする。
また今後も情報交換しようぜ、と名刺交換して、お互い午前様になるころ再会を約して別れる。
実りある同窓会だった。
仕事とからむ接点も実りではあるが、何度も引っ越しをして根無し草の気分でいた渡り鳥にとっては、同級生たちの恐ろしい記憶力のおかげで「係留点」につなぎとめられた実感はひとしお。
その係留点を「選挙区」にしている同級生は(たまたま)いなかったので、生臭い話も出なかったのも幸運だった。風化しかかっていた世界が、霞が晴れるようにくっきりよみがえってくる。
まぁ、これから「君は神を信じているのか?」「洗剤は何をお使い?」「うちの店にきてきて」という連絡が舞い込むのかもしれんが(笑)、もう耐性はできている。
いい意味で、大人ばかりだしね。
「結婚しちゃったの?」という筋の妖しい探りは、今のところさっぱり受信していない。あったとしても、この筋の耐性はないので困るが(笑)、ほとんど初対面に近い新鮮味すら覚える熟女のお歴々は、同じ係留点でつながれている間柄だから、飲んで四方山話に花を咲かせるには申し分ない「愉快なおばちゃまたち」だ。
「次は卒業40周年、その次は還暦記念で集まりまひょ」と提案すると、「こわいなー!」と笑いながらも、目を輝かせているのもキュート。
僕は孫のような長女を抱いて、披露できますことやら?
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