事務長さんと会う約束をしていたのが、電話でアポ繰り上げの依頼をもらって2時間ほど早く待ち合わせに出向いた。
よほど何かあったのかと思いきや、腹にすえかねたようなグチを聞くことになってしまった。秀才医師を呼び捨てにしての憤懣オンパレード。
メールでの応酬はccで傍観していたので、こりゃもめとるなーと思っていたら、予想以上に不信感が発酵していた。もう、かかわりたくない!と。
秀才医師からは、ときどき事務長さんに関するグチのような直電話をもらって、僕が聞き役フォロー役になることもたびたびあった。
Vの字というかΛ字というか、かすがい甘納豆役になる僕も、まーまーまーまー…と両成敗するほどの人徳はない。
最初は秀才勤務医と個性派フリー医とのバトルに巻き込まれ、これは金銭解決したのだが、それを追認したのだからよしとするしかない。今さら蒸し返しても、覆水盆に返らずである。
○○は(もう、先生とは呼ばない)、金に細かすぎますよね〜とグチる事務長さんには、
「正当な請求ならしてもいいでしょうけど、社団の資産も大して残っていないんですから、きれいに清算して、債権債務に決着つけて同意決議しておけばええんちゃいますか」とアドバイスしておいた。
若干の繰り越し資産は、弁護士に支払って決着させるのが一番賢明だ。
法律上の地位と債権債務を確認して社団解散としておけば、それで解決とするのが大人のスタンスだろう。
そこを超えて、人格評価まで踏み込むから耳障りのよろしくない言葉も飛び交うわけで・・・もしかすると、僕についても陰で何かこきおろされているかもしれない(たぶん、風見鶏と評されているだろう)。
病院内部での医療スタッフ同士の確執は、聞かされても僕にはコメントしようがない。
研究会という病院外のフィールドになると、チームプレイを考慮する必要がないので、かなり激しい人格攻撃になる。聞かされてもつらい。
「どうせ金がほしいフリーランスの医師だから、時間を割いて自分の思うような結果が出ないとクレームつけてるだけでしょ。だから払ってやったらいいんです」とグチった相手=つまり僕の身の上をご存知なかったのか、
「あのー、僕もフリーランスだから、タイム・ロスは減収に直結する立場はわかるんですよ」
とフォローすると、フリー批判は封印されてしまった。
いま意外とフリーの麻酔医や外科医は多くて、フリーの助けを借りないと機能不全に陥る病院も多い。看護職もパートでつないでいるところは多い。フリーランサーを大事にしないと、人材が満たせないのである(その点、僕の職場は大学より手厚い待遇だから人使いがうまい)。
勤務医と「フリ医」との確執もあるし、なにぶん頭の回転が速すぎる秀才と、日本的な根回し型組織運営との歩幅の違いもある。
僕は秀才医師に早すぎる判断を諌めたこともあるし、敵対分子の排除のしかた(?)ならびに成功例・失敗例は自分の過去の経験を引用してアドバイスもした。
「それなら、僕の後任の代表やりませんか」とお鉢を向けられたこともあったが、「僕はリーダーの器ではないから茶坊主がよろしいっすわ」とかわして今に至っている。
このゴタゴタが続き、ふだん仏様のように温厚な事務長さんがストレスでくじけそうになるなら、しゃしゃり出て収拾にあたる必要もあるのかな?と推移を見守っているところではある。
こういう組織の内乱は、ただただみっともないだけ。
だれも独裁支配しようとか、報酬を独占しようとか、悪意をもって動いているわけではないから、つまるところ思い込みや好き嫌いの応酬になっている。敵は具体的なだれかさんというより、不和そのものだ。
内輪もめは、しょせん勢力争いだから、自己目的化してしまう。
ちゃんと組織の目標を掲げて、その実現のためにそれぞれ得意技を発揮してもらうのが真っ当な組織でありましょう。
そのためには、スタッフ全員のポテンシャルをちゃんと把握して、最大効用が見込める仕事の割り振りをするのがリーダーの使命だろう。
「せんせ、僕の能力は何であるか、把握してますか?」と正面から直球を投げたこともあるが、答えに窮していた。これだけで、「あなたのリーダーシップには疑問を持っていますよ」というメッセージとしては伝わっているはずだ。
本職のルーチンワークに忙殺されている医師を、ややこしい権力闘争に巻き込むのも気の毒な話だから、理想をいえば市民活動のオルグがうまいヒマな人にうまく権限移譲がなされればいいのだが・・・まぁそんな都合のいい人材はいない。
組織内部で次世代リーダーを育てなかったのが、最大の手落ちである。
だから疲弊した事務長さんが、投げやりに「もう解散!」と言い放ってしまう。ホンネは正反対であることも、痛いほどわかる。
政界の参院戦後処理も似ている。
福島みずほも党首を降りてしまったが、投げ出すのは安易な事態収拾でしかない。
あの政党から昨年脱出した女医さんがおられるが、この女医さんの元部下が我々研究会の暫定代表だから、何の因果なんだか・・・