なんの変哲もない道具でも、初めて使うときは、使い方を教え教わる段階はあった方がいい。
杖なんか、シンプルすぎるのでレッスンをしている医療機関や施設、販売店がどれだけあるのか疑問だ。ユーザーも甘く見ていて、杖をつきそこねたり、人にひっかけて転んだりする事故も、相当数あるにちがいない。
足腰が不自由になってもう四半世紀、杖をついてきた老母が、歩行補助器をすすめられ、あてがわれた現物を見せながら「前につつつーと滑っていくのがこわい」とぼやいていたので、チェックしてみた。
指一本で持ち上がるほど軽いし、折りたためるし、バッグもついているし、左右ブレーキまでついていて至れり尽くせり。よくできている。
ただ、スムーズすぎて、ころがるペースと歩くペースが合わないと前のめりになる。ならブレーキかければいいではないか、と考えるのは健常者の浅はかさ。左右のブレーキと、左右いびつな体重移動、押す力の絶妙なタイミングを身につけないと、ヘトヘトになってしまう。
リハビリ先の医院で、PT にちゃんと訓練してもらえればいいのだが、そこまでプログラムされたリハにはなっていない。まず、実際の街の中から自宅までのシームレスな動作観察をしないと、「この患者さんはこういう動作をしがちで、ここが危ない」ということがわからない。
在宅と地域にまたがる生活実態を見ずに、事業所内で「箱庭教習」するのが手一杯なのが、リハビリの現状のようだ。
なら、家族が考えるしかない。
前に押すから先走ってしまうわけで、まずグリップをしっかりつかんでまっすぐ立つ補助具なのだと考えてもらうことにした。前には押さない。
あくまでも前進するのは脚力で、自分の体に補助器がついてくるように、しっかり体に引き寄せれば暴走せんのでは?ゆっくりでいいから。
とかなんとか、アドバイスしながら練習してもらった結果を、整形外科に出向いて介護用品業者に伝えたのだそうな。
すると、業者が「こんな使い方は気づかなかった。今まで教えたこともなかった。息子さん、何やってはる人ですか!?」と、驚いてはったで〜とコーフン気味に電話報告を受けた。
別に特別なことをしたわけでもないし、利用者の動作をちゃんと観察することと、おのれが製造販売している道具のクセをよく知ることが、福祉機器の提供者の責任でしょうが?と唖然とするばかり。こんな基本中の基本に気づかないのは、困った会社ですな。
福祉機器ではないが、歩行補助具といえば僕自身、ダブルストックは「山の伴」にして20年。ノルディックウォーキングだなんだとブームになる前から、サスペンションつきの伸縮ストックを使うようになって、下山時の足腰への負担は激減した。
今でこそ、しゃれた細身タイプの山用ストックもいろいろ出ていて目移りするが、どこも故障しない無骨なドイツ製の二本杖は、もう両前足のように体と一体になっている。
ただ、だれも教えてくれなかった。
アルペンスキーやモーグル教室ではストックワークを教えてもらえたが、登山用は使い方がちがうので、ちゃんと現場で使い方を教わった方がいいと思う。飾りのようにちょこんと突いているだけのユーザーも多いが、しっかり荷重すると、効果はてきめんなのだ。
リハビリでも、二本杖を使うケースはあるようだが、二本杖段階を飛び越してカートを押す高齢者も多い。
整形外科医がいうには、カートに便りすぎると猫背になりがちなので、あまりおすすめはしませんとのこと。
だから、まっすぐ立つための補助具として使えばいいわけで、カートやバギーのようにころがすことを意識しない(させない)方がいいのではないだろうか。
杖は突いた先に濡れ落ち葉があったりすると滑る危険があるので、ゆっくりころがす補助器の方が安定していいと思う。
それでも、操作の手順やペース、不整地や段差へのタイプなんかは、やはり「路上教習」が欠かせない。
週末は、路上教習をしにいかなくてはイケマセン・・・
まぁ、「いつかは我が身」かもしれないから、後々のためにも(苦笑)。
僕なら、使い慣れたダブルストックを使い続けたいところですがね。
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